レセプトの現在
I.勿論国民のためでなければならない
政府の医療保険が財政的に破綻状態にあり、急いで何か手を打たなければ、国民が借金を負う事になる。この数年、こうした報道が目立つようになった。診療報酬請求のオンライン化はこれを背景にスタートした。
オンライン化が医療機関にもたらす最大のメリットは、レセプトの輸送や保管、総括や印刷など、事務処理にかかるコストの大幅な削減にある。韓国のように医療機関への診療報酬支払いの期間が短縮されることが望ましいが、政府からはっきりとした公表は行われていない。
現在、提出されたレセプトは、コンピュータで読み取るためのデータ変換作業が更に必要である。支払基金及び国保連合会では、手書きで提出された数パーセントのレセプト処理に、人手を使って再入力をしているのが現状だ。厚生労働省は、これに関わっている外郭団体の人員を整理して莫大な経費を浮かせることに依って、国民の為、或いは医療関係者の為にしたいのである。
一方で、レセプトデータの医療政策や疫学調査等のための二次利用も目的の一つとされる。全レセプトデータを国の責任において確実に集約、蓄積し、ナショナル(国家規模)・データベースを構築する考えである。電子レセプトによる請求データ等の活用、データベースを利用した研究等の活性化が、規制改革会議により決定付けられている。しかし、現段階での電子化は、単なるレセプトの伝送手段でしかない。
Ⅱ.オンライン化で請求業務を簡略化して保険料を減らせるか
政府は、レセプトの受入を規格化、コード化することによって、複雑な請求業務の簡略化に着手した。しかしこれは、保険料を少しでも減らしたい患者と、煩雑な請求手続きを実行しなければならないドクターを無視していると言わなければならない。何故なら、複雑な処置を一元化で丸めてしまうことは、個々の患者、個々の疾病を優先した料金体系とは言えないからである。名医も藪医者も同じようになるのでは、名医による複雑で困難な処置が価格体系に依って不可能になってしまうケースが出てくると思われる。
Ⅲ.ドクターにのしかかる不安と負担は?
(1)経営努力と診療努力
カルテを書くことからレセプト請求まで責任を負わされ、その上進歩の早い医療業界の勉強をして技術に遅れないようにしないと、患者が減って経営が成り立たなくなる、と言うジレンマに立たされているのがドクターである。
(2)人手
中規模以上の病院では、カルテをコンピュータで入力する業務はドクターや勤務医が行う、レセプト請求業務は事務職員が行う、という作業の分担が可能だが、小規模病院はこれができない。時間的余裕の無さは診療努力をも削ってしまう。
(3)経費
個人開業の医院でもできれば医業と事務部門を別にしたいと考えてはいるが、経費の関係でできないのも現状である。
Ⅳ.全面オンライン化に踏み切って2年経っている韓国
カルテ開示やカルテの持ち出し禁止は、日本と同じ問題で、韓国のドクターも悩んでいたが、オンライン化に関しては大変割り切った見解で対処していた。
- 大病院でも個人病院でも医業と事務は別と判断している。
- 大病院と同じように、事務要員を雇う資力があれば、院内で全て処理をしたいが、その資力がなければアウトソーシングをフル活用して、ドクター自身は医業に専念すると力説していた。そのことが患者の信用や信頼を一番に考えることができ、患者を増やし収入を増やす一番の方法だと言っていた。
- ドクターが医業に重点を置いていると考えられるのは、例えば、日本ではやっと10%台であるインプラント技術一つをとって見ても、韓国は30%台のドクターが技術を習得していることが挙げられる。手術までに要する期間も、日本では半年がかりだが、韓国では、わずか1日でも技術的には可能だと言うのである。従って費用も当然安くできるし、結果が信頼に直結して行くのである。
- オンラインについては、「決められたことには従わなければならない」と基本的には肯定していて、良い点は認め、悪い点は見られないように通りぬけるような方法で対処していると思われた。
- 韓国の歯科医院が、代行業者に対する支払い額は5%程度と高めである。これは日本と比較して医療収入が多いことに依る。アウトソーシングにはそれなりの費用がかかるが、収入が全てを補っていた。
- 韓国政府の制約は日本以上である。例えばカルテの院外持ち出し禁止は日本と同じだが、代行業者は代行料5%の中で、診療所が1日の診療が終えた時点でカルテを回収し、夜間作業で入力する。朝までにはカルテを診療所に返還することで、カルテを持ち出しても診療所の診療行為に支障がないのである。法律の網の目を潜るかのように、違反せず取り決めは守ると言う割り切った考え方をしているように思えた。
レセプトの現在
現在は2011年の4月から完全オンライン化という事で進んでいるが、コンピュータ化の進捗状況は各都道府県において、普及率で60%台~90%近くまであり、残る40%~10%の医院は、コンピュータ化が困難なところと判断できると思われる。ある調査データでは、こうしたが医院のうち、廃業すると回答した医師が7.2%と出ているが、たとえ猶予期間を設定しても医業の荒廃に繋がりかねないと、歯科業界では心配している。
この解決策の一つとして、紙レセプトで提出されたものを電算処理が出来るところまで代行請求をする、という案が最初から出ている。これについては、当社が平成元年から試験的に、又平成4年頃から企業化して代行入力を手掛けているが、当社の経験から、日本歯科医師会にしても県の歯科医師会にしても、非常に難渋することが予想される。ちなみに日本歯科医師会では困難と表明しているし、各県の歯科医師会の中からも困難だと言う意見も出始めているようである。その理由を挙げてみたい。Ⅰ.今流通しているコンピュータの分析
- コンピュータはそれ程使い易いものではない。
- 比較的使い易いコンピュータは、それなりに高価である。
- 使い易くしたために入力時間が長くかかるようになる。
- 各社のコンピュータを規格を統一する事ができれば、今まで流通しているコンピュータが死蔵されてしまう。
- 仮に保険の内容を簡略化してしまうと、医療の内容も簡素化しないと労働の対価に合わない事になる。ドクターの高度医療に対する意欲の減退に繋がり兼ねない。当然それは優秀なドクターが育たない事にも繋がる。
Ⅱ.代行業務の検討
代行業務が認められているのは医師会、歯科医師会、支払基金ということであるが、当社の長期に亘る代行業務の経験知を活用して、今あるコンピュータの中から使い易いと思われる機種を採用し、代行業務が可能かを検討したい。
(1)最初に、「代行業務が何故困難なのか」ということから見てみたい。歯科医師会や医師会は会員の出資で運営されている法人組織である。一部の会員の為に組織の資金を使うことができない。バランスを保つために、運営資金を利用する医師や歯科医師が、無料で代行をしてもらうということもできない。また、安いコストで代行をするということには無理がある。勿論、支払基金が代行をしなければならないとなれば、税金の無駄遣いとも言える今までのやり方を是正してオンライン化を目指すことと矛盾することになる。

(2)それでは、医師会、歯科医師会、支払基金に、代行業務を認めると言うことがどういうことなのか。これは単に「代行業を遂行できると考えているから」ということに過ぎない。だが、既に各地の関係者の間では、理屈の上では「ドクターの代わりにどうにかやれるだろう」と思っていても、「実際にはかなり難しい」という意見が上がっているのも事実である。当社は平成の初めから、実際に代行業として、コンピュータの機種の選択から採用までを経験しており、諸経験に根ざした以下の事柄を踏まえて敢えて「不可能」と断言する。
- コンピュータの技術的問題
- 1ユーザあたりに掛かるコストの問題
- 操作性の問題
- 人材の問題
- 人件費の問題
- 教育の問題
- 請求期間の偏りから作業の標準化(平準化)ができない問題
- 場所の問題
- 管理の問題
代行業が認められていないから代行業が発展しないのではなく、代行業が、以上のような理由から、困難な業務であるために発展しないのである。いろいろなところで試みている事は聞いているが、皆失敗して挫折しているのである。それを歯科医師会や医師会でやろうとしても、かなりの覚悟をしなければできないのではないだろうか。
Ⅵ.当社の現状
Ⅰ.当社では、「コンピュータの技術的問題」「1ユーザーに掛かるコストの問題」「操作性の問題」を解決する為に、数社のコンピュータを比較調査して、自社で取り扱うコンピュータを選択した経緯がある。コンピュータに依っては倍以上の時間が掛かるものも有り、コストと操作性から使えないものも有る。医療保険のチェックが厳しく掛かっているものが使い易い、と言うこともできないし、価格が高いものほど良い、と言うこともできない。これを道具として使うのが人間である以上、厳格なチェックがスムースな作業を妨げる事は事実と言わねばならない。また、価格が高いコンピュータほどおおむね早くて使い易いことも事実であるが、使い易いことと価格が安いこととは反比例するために、どの辺で妥協するかが選びどころということである。勿論そのためには、個人情報漏洩の事故対策や、故障時の時間的ロスを防ぐリカバリー対策等も、代行を企業化するには細心の配慮をしている。
Ⅱ.「人材の問題」「人件費の問題」「教育の問題」「請求期間の偏りから作業の標準化(平準化)が出来ない問題」等は、何れも労働者の雇用に関する問題である。当社では販売したコンピュータの30%くらいをこの代行で対応している。これらの問題は、ドクターがコンピュータの入力をすれば一挙に解決するように思われるが、このコンピュータの入力は思ったほど楽ではなく(簡単と楽とでは意味が違う)、保険の業務はドクターが今まで大学や専門医学で学んだものと異質なものである。専門大病院や大学病院では、ドクターのカルテ入力に基づいて、保険請求は専門の保険請求事務職員が行なっているのが一般的である。小規模な医院では、カルテを書いたドクターが、それに基づいた請求事務までを行なっている。異質な業務を一人で行うことになるために煩雑を極めている。当社では、異質な業務のうちの、保険請求の部分を代行している。
Ⅲ.「場所の問題」に関しては、日本も韓国と同様にカルテの持ち出しが禁止されているので、当社では訪問入力を原則にしている。場所は受託している医院の現場に訪問する事で解決している。次に管理の問題であるが、当社では病院のスタッフの派遣業務も行なっているので、この代行業は派遣の業務と違い、代行のレセライターの管理は当社の管理規定に基づいて管理運営している。訪問先のレセライターの勤務管理は派遣業務と同じように、訪問先のドクター又は管理者に依頼する形を採っている。
Ⅳ.現在、当社では2011年のオンライン化に照準を合わせ、人材の確保と教育を行なっている。2011年からのオンライン化が実施されると、コンピュータを準備しても請求業務ができないとして、廃業を余儀なくされる医院は、全体の7.2パーセントを占めるという調査報告がある。
そうたした中、手書きの「書き屋」を組織しているあるレセプト事務業者が、9月以降は「書き屋」を組織していくことができないと廃業を宣言、これを受けて、今まで手書き屋に依頼していた医院は、高価なコンピュータを自分で使うことを考えて動き出しているようだ。人員の確保とその教育に限度があるため、すべてをカバーできるわけではないが、そうした医院に、是非とも当社の代行サービスがあることを知っていただきたい。
当社の顧客の大半は、こうした診療所である。ドクターのもとに日参させていただき、電算化の成り行きの説明および是非を論じ、時には門前払いをされ、或いは労われ、代行システムのご理解、そして好評を頂いてきた。当社の代行システムは、歯科医院の現場にいるドクターを始め、窓口スタッフの負担を少しでも軽減させることが目的である。代行業を担う当社レセライターには、悪質な請求とみなされるようなレセプト上のミスを排除し、返戻率の低減に努めることを徹底させている。また、当社が提供できる代行は千葉県内に限定している。件数とデータ量によるが、千葉県内の7.2パーセントの医院をカバーできる態勢にはあり、最終的には申し込み順の対応となる事は避けられないと思っている。
代表取締役 寺澤一良
